病院の業務用エアコンはどれを選ぶ?選び方のポイントを解説

病院には、毎日多くの患者さんが訪れます。病院によっては入院している患者さんもおられますが、その場合常に快適な空調が求められることから、基本的にエアコンは24時間稼働させなければなりません。また、病院によって規模が異なるため、適切な種類の業務用エアコンを導入することが大切です。
今回は、病院に導入する業務用エアコンの選び方をご紹介します。
目次
病院の業務用エアコンでおすすめの機能
使用目的や訪れる人が他とは異なる病院では、業務用エアコンにもさまざまな機能が求められます。おすすめの機能を紹介するので、空調設備を選ぶ際の基準の一つとして参考にしてください。
・冷暖房が部屋ごとに設定できる
通常の業務用エアコンでは、個室の空調管理をひとまとめに行える「一括管理システム」が多く採用されています。医療従事者のみが冷暖房や温度などの操作を行い、室内外の状況に合わせて空調環境を整えられるのがメリットです。また、患者さん自らが設定温度を変更してしまうことで生じる、寒すぎたり暑すぎたりする問題も防げます。
ただし、設置場所や患者さんの病状によって、設定された温度が体調を悪化させてしまうこともあるでしょう。そのような場合におすすめなのが「冷暖房フリーシステム機能」です。部屋ごとに冷房する暖房するといった空調管理ができるため、個々の体調に応じて最適な温度を保つことができます。
・人感センサー
患者さん一人一人に対して快適な空調環境を実現できるのが「人感センサー機能」です。人の動きを感知して風向きを自在に変えるため、エアコンの風が直接当たる不快感を低減できます。また、人員の増減に応じて温度調節ができるのも魅力です。なかには無人になったら電源をOFFにしてくれる機種もあり、より効率的な空調ができます。さらに、足元の温度をチェックして温冷風を循環させる「床温度センサー」を組み合わせれば、一年中心地よく過ごせるでしょう。
・空気清浄機能
病院には、疾患をもっている方や体の免疫力が落ちている方など、さまざまな方が診察を受けに来られます。なかにはウイルスや菌を保有している方もいるかもしれません。ウイルスの蔓延や感染を防ぐためにも、「空気清浄機能」は必要不可欠と言えるでしょう。また菌の原因となるホコリも同時に除去することで、常にクリーンな空気を保つことができます。できれば「脱臭機能」を付いているものを選び、薬品や排泄物のにおい対策も行っておきましょう。
業務用エアコンに搭載されている空気清浄装置には、ダイキンの「ストリーマ」や三菱電機の「電気集じん器」などがあります。
・加湿機能
病院では室内の湿度を一定に保つ「加湿機能」も必要です。病院内が乾燥していると喉や肌に支障をきたすだけでなく、ウイルスの繁殖が心配されます。特に冬場は空気が乾燥しやすいため、一層細やかな湿度管理が求められるでしょう。また薬品や精密機械を使用・保管している場面でも活躍します。
病院でよく使われる業務用エアコンの種類
業務用エアコンにはさまざまなタイプがあり、種類によって性能や工事方法が異なります。病院では、特に天井カセット形や天井吊り形といった、天井に取り付けるタイプが人気です。製品を選ぶときの大切な要素にもなるので、設置場所の用途や形状、環境に応じて適切なものを選びましょう。
・天井カセット形
天井カセット形は、天井埋込タイプの業務用エアコンです。エアコン本体が室内に露出しないため、内観をすっきりと見せられます。
また、吹出口の数によって種類が分かれているのも特徴です。たとえば、設置できるスペースが小さい下がり天井や細長い空間には、1方向タイプが重宝します。より広範囲に風を送りたいのであれば、両サイドに送風可能な2方向タイプ、温度ムラを減らして最適な空調環境を目指す場合は、4方向タイプを選びましょう。
加えて最近では、360度に送風できるラウンドフロータイプも登場しています。一方で、天井カセット形は天井内部への配管工事が必要であり、設置費用の高さも懸念されるので、設置場所の状況をよく確認したうえで選ぶことが大切です。
・天井吊り形
天井カセット形が埋込式であるのに対し、天井吊り形は室内機を吊るすだけで簡単に設置できます。天井に大きな穴を開けたり配管を通したりなどの工事が必要ないため、比較的コストが安く済むのも魅力です。吹出口は基本的に1方向ですが、機種によっては4方向のタイプもあります。
ただし、天井が低い場所ではエアコン本体が目立ってしまい、圧迫感を感じてしまう場合があります。配管も露出するため、空間の雰囲気を重視する場所には向いていません。
・こんな場所にはこの業務用エアコンがおすすめ
病院には診察室や待合室、病室といったさまざまな部屋があります。場所ごとにおすすめの業務用エアコンを紹介するので、空調設備を導入する際の参考にしてください。
<診察室>
診察室では、患者さんの着脱時を考慮して、エアコンの直風を避けられる人感センサー付きのものを選びましょう。また天井カセットの4方向タイプにすれば隅々まで風が届き、場所によって生じやすい温度ムラも防げます。
<共有スペース>
患者さんがゆったりとくつろいだり談話したりする共有スペースには、診察室同様、人感センサーが搭載された天井カセット型がおすすめです。スペースの大きさに応じて吹出口の数を選ぶようにしましょう。
<個室や待合室>
個室や待合室では天井吊り形のエアコンが適しています。天井の配管工事が要らず、設置費用も節約できるので、個室の数が多い病院ほど向いているでしょう。また患者さんの誤操作を防ぐために操作のシンプルなものが求められます。
業務用エアコンに求められる馬力は?

馬力とは、業務用エアコンが有する能力を示すもので、製品を選ぶうえで大変重要な項目です。設置場所に適した馬力を選ばないとかえって電気代が高くなり、エアコンの劣化や故障にもつながる恐れもあるため、しっかりと把握しておきましょう。
ここでは、床面積、坪数とともに目安となる馬力の数値を表にまとめたので、実際の設置場所と照らし合わせてみてください。
床面積(坪) | 馬力の目安 |
24〜35m²(7〜11坪) | 1.5馬力 |
26〜39m²(8〜12坪) | 1.8馬力 |
29〜43m²(9〜13坪) | 2.0馬力 |
33〜49m²(10〜15坪) | 2.3馬力 |
37〜55m²(11〜17坪) | 2.5馬力 |
47〜70m²(14〜21坪) | 3.0馬力 |
66〜97m²(20〜29坪) | 4.0馬力 |
82〜122m²(25〜37坪) | 5.0馬力 |
94〜139m²(28〜42坪) | 6.0馬力 |
132〜195m²(40〜59坪) | 8.0馬力 |
165〜243m²(50〜74坪) | 10馬力 |
床面積や坪数は馬力を選ぶ際の基準の一つでもありますが、病院では精密機械や冷蔵設備などから発せられる熱量(算出基準負荷冷房)も考慮する必要があります。病院の算出基準負荷冷房は、1m²あたり190〜230Wなので、施設の床面積に応じて計算してみるとよいでしょう。
長時間使用する病院の業務用エアコンに必要なこと
冒頭で述べたように、病院は24時間止まることなく空調を管理し続けなければなりません。そこで注目したいのが省エネ機能です。
ここからは病院の業務用エアコンに必要とされる省エネ機能と、それに関連するAPFや標準省エネ機種、超標準省エネ機種、グリーン購入法などの用語について解説します。
・長時間稼働させる場合は省エネ機能が必須
病院のようにエアコンが常に稼働している状態では、月々の電気代が心配です。特に、何年も前から使用しているような旧型の業務用エアコンは、運転効率の低下に加え、設置当初よりも電気代が高くなっていることが予想されます。したがって、病院の業務用エアコンには省エネ機能がかかせません。省エネ性の高さは機器の劣化を防ぐだけでなく、電気代の節約にもつながります。もし以前と比べて冷暖房の効きが悪く、電気代が高くなったのであれば、省エネ性能に特化した機種への買い替えを検討することをおすすめします。業務用エアコンの省エネ性能を見極める際には、次に解説するAPFの数値がポイントになるでしょう。
・APFとは
APFとは「Annual Performance Factor」を略した言葉で、日本語に訳すと「通年エネルギー消費効率」という意味です。APFは、一定の条件下で1年間業務用エアコンを使用した際に割り出される、消費電力1kWhあたりの冷暖房能力を示しています。世界的な省エネルギーに関する意識の高まりにより、2006年のJIS改正後、業務用エアコンにおけるAPF表示が義務付けられました。
APFの数値が大きいほど少ない電気量で冷暖房効果が得られ、省エネ性能に優れていると言えます。より省エネ性能が高い業務用エアコンを導入したいのであれば、カタログに記載されているAPFを確認してみましょう。
・標準省エネ機種と超省エネ機種
業務用エアコンはAPFの数値を基準として、「標準省エネ機種」と「超省エネ機種」の2つに分けられています。どちらも高い省エネ性能をもっていますが、超省エネ機種のほうが大半において標準省エネ機種の性能を上回っているのが特徴です。
<標準省エネ機種>
標準省エネ機種とは、グリーン購入法に適合している業務用エアコンです。グリーン購入法施行後に開発されたものは標準省エネ機種と呼ばず、一部を除き、すべて「グリーン購入法基準値」をクリアしている機種とされます。グリーン購入法が施行される前のものよりもAPFの値が高いのがポイントです。
代表的な製品にダイキンの「ZEAS(ジアス)」や日立の「省エネの達人」があり、機種によっては室外機がコンパクトに設計されています。
<超省エネ機種>
標準省エネ機種よりも優れた省エネ性能を有し、「2015年省エネルギー法基準値」を達成しているのが超省エネ機種です。標準機種よりも消費電力を削減でき、低温時の冷暖房能力も高い特徴があります。天井カセット形の室内機にも省エネ機能が搭載されており、ダイキンの「Eco ZEAS」や日立の「省エネの達人プレミアム」などが有名です。
・グリーン購入法とは
グリーン購入法とは、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」を正式名称とする、国や地方公共団体が「特定調達品目」として、環境負荷が低い製品を購入することを促すための法律です。また事業者や国民も可能な限り環境に優しい物品を選ぶこと、事業者・民間団体・国が環境物品についての適切な情報を提供することも定められています。
エアコンなどの空調設備も例外ではなく、グリーン購入法に基づいた製品の開発が求められています。
あまり規模が大きくない病院でも業務用エアコンを導入すべき?

クリニックや歯科医院といった、比較的小さな病院でも業務用エアコンは必要です。床面積で考えると家庭用エアコンでも対応できますが、耐久性や柔軟性、機能性、冷暖房能力を考慮すると業務用エアコンの方が適しています。また初期費用はかかりますが、配管を伸ばせば1台の室外機で多くの部屋を空調できるうえ、さまざまなレイアウトでエアコンが設置できるのもメリットです。さらに業務用エアコンには三相(さんそう)と呼ばれる電源が使われています。家庭用エアコンの電源に用いられる単相よりも送電効率がよく、少ない電流で同等の電力を確保できることが特徴です。そのため、設置環境によっては電気料金が安く済む場合があります。空調機を継続的に使用するような病院では、ランニングコストの低さも重要なポイントと言えるでしょう。
ただし、場所によっては家庭用エアコンを選んだほうがメリットが大きい場合もあるので、使用目的や面積、馬力などに応じて選択していくことが大切です。
まとめ
病院の業務用エアコンを選ぶポイントは、省エネ性能・機能・形状・面積・馬力です。5つの要素のうち1つでも欠けてしまえば、十分に空調環境を整えることができません。そのため、病院の種類や規模に応じて適切に選ぶことが大切です。
エアコン総本店では、病院における業務用エアコンの設置も対応しております。それぞれの設置場所に適した空調設備を提案させていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。